空を見上げるのは、祈り

流れ星が消えないうちに (新潮文庫)

流れ星が消えないうちに (新潮文庫)

はじめましてな橋本紡さん。最近、恋愛小説を読むようになったので、本屋さんで平積みされていたこの本を手に取りました。でも、これは恋愛小説じゃないなあ。切ない、よくある、恋愛小説だと思いながら読んでたら、全然、良い意味で期待を裏切られて。このお話の中で度々出てくる、加地くんや巧や奈緒子が繰り返す言葉。考えてばかりで立ち止まっていないで、動かないと。動いてこそ、見えてくるものがある。立っている場所が変わると、同じ風景でも違うふうに見える。本当に、そのとおりだなあと。なんだかすごく、これらの言葉が自分の中に響いてきた。人生の再生。奈緒子が日々見つける小さな幸せ。奈緒子と巧くんのそれぞれの思いと重なる思い。お話自体は淡々と、そこまで大きな事件もなく進んでいくけど、そのなんていうか、温度がね、良いね。優しいしそっと寄り添う。人って、ほんと、生きていれば山のように辛いこと・悲しいことに遭遇するけど、でもそうやって、辛いなあ・悲しいなあって思いながら泣きながら生きていくことで、明日を生きられるっていうか。奈緒子の、少しずつ少しずつ前に進んでいる感じが、なんだかすごく良かった。巧くんもかっこいいよね、うん。そして主人公たちを取り巻くまわりの人たちもすごく良い。あったかい、お話に出会いました。そして最後になにより解説が重松さん!完璧すぎました。