善と悪

ヘヴン (講談社文庫)

ヘヴン (講談社文庫)

川上未映子さんの作品、初めて読んだ。ここ最近、いじめが題材のお話をいくつか読んできた。このお話も、その流れで知って、買って、読んだ。いじめられた経験のないわたしなんかがこんなこと言うのはどうかと思うけど、本当に読んでてしんどくなった。つらくて。いじめの描写が本当に。涙が出るほどで。ただただ、いじめのシーンはそれだけ。つらい。しんどい。なかなか読み進められなくて。想像することしかできないけど。わたしなんかがつらくなるのは間違ってるかも知れないけど。でも、それでもわたしはいじめに対して何かを考えたいと思うから、こういうお話を手に取ってしまうのかな。主人公と、百瀬の、病院でのやりとりは何ていうかほんと…うーん、どう言ったら良いんだろう。百瀬の言うことは、半分分かるし、半分分からない。そうじゃないでしょ、そういうことじゃないでしょ、あなたは間違ってるよって百瀬に言ってやりたいんだけど、じゃあどう違うの?そうじゃないなら、なんなの?って百瀬に聞かれたら、わたしは、きっと、答えられない。それに反論するほどの考えを今は持ち合わせていない。それが悔しかった。まさに何か善で、何が悪なのか。誰が強くて、誰が弱いのか。このお話の中では決まったこたえは出てこないけど、わたしはそれは作者からの挑戦なんだと思う。百瀬にどう反論できるか、きちんと、百瀬や二ノ宮が反論できなくなるぐらいに、反論できるのか、と。読んでて、もう何が良いことで何が悪いことなのか、分からなくなっちゃった。そのぐらい、このお話には考えさせられる。難しい。でもね、主人公の義理のお母さんがね、すごくいい。お母さんの言葉に、泣いてしまった。良かった、お母さんがこういう人で。